波佐見町への集客事業についても教えてください

集客事業を行っている理由は大きく二つあります。一つは波佐見焼の知名度をさらに高めるため、もう一つは波佐見焼の販売利益の拡大のためです。焼き物は窯元で製造されてから、いくつもの流通経路を経て消費者の手元に届きます。消費者に波佐見町に来てもらって直接波佐見焼を購入してもらえれば、多くの流通コストを省くことができ、結果として私たちの利益に繋がるのです。そのためにも、波佐見町を「観光で来てもらえる街」にすることはとても重要なことなのです。
集客事業の中で最も代表的なものは西の原の運営です。この地にはもともと江戸時代から続く窯元が営む福幸製陶所があったのですが、2003年に廃業した後、当社が買い取りました。その後、この場所を波佐見町に移住してきた若者の拠点として提供したところ、生活雑貨店「HANAわくすい」やカフェレストラン「monné legui mooks(モンネ・ルギ・ムック)」、ショップ&オルタナティブスペース「monné porte(モンネ・ポルト)」などのお店が次々とオープンすることになりました。
彼らは波佐見町にやってくる前に日本中をバイクで旅していた者、ほかの産地で陶芸を営んでいた者などさまざまなバックグラウンドを持っています。そんな彼らの豊かな感性と今まで波佐見で育まれてきた文化が融合して新たな価値が生み出される場所となったのが西の原です。旧製陶所の建物を利用した個性的なショップが連なるこの場所は国内屈指のオシャレスポットとして注目を集めており、今では年間15~16万人の観光客が訪れています。

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お話を伺っていると、自社はもとより波佐見町のために取組みを行っているという印象を受けます

結局、それが自分たちのためになるのです。波佐見焼の製造は細かく分業されているという特徴があるからか、波佐見町ではみんなで助け合う文化が根付いています。生地屋が作った生地に型屋が色を塗り、窯元が焼いて商社が販売する、というように波佐見焼を販売するためにはいろんな企業で協力する必要があるのです。
こうしてみんなで協力して波佐見焼を作り上げてきたからこそ、自分だけが儲かればいいという考えを持つことはありません。商社同士の場合でもライバル関係とはいえ足を引っ張り合うことはなく、一致団結して波佐見焼ブランドの向上に向けて取り組んでいこうという意識が強いです。
この考え方は、協同組織金融機関の相互扶助の精神と同じですよね。信用組合さんも生地屋から商社までお取引があるようですが、私たちが助け合いながら波佐見焼を作っているその輪の中に信用組合さんがいるのは、ある意味必然的なことなのかもしれません。
また、当社の児玉盛介会長が主宰する「朝飯会(ちょうはんかい)」も波佐見町の団結力強化に一役買っているのではないでしょうか。
この会は毎月第一土曜日の午前6時半から朝食を食べながら行う勉強会で、1997年の初回から今に至るまで200回近く開催しています。毎回約40名の参加者は波佐見町長をはじめとした公務員や地元の事業者、金融機関職員などバラエティに富んでいます。会の中で参加者には全員の前で自己紹介を兼ねて好きなことを発言する機会が与えられます。短い人は10秒から長い人は5分以上、夢を熱く語る人もいれば最近見た映画のようなたわいもない話をする人もいる。このように同業者だけでなく行政や金融機関などさまざまなメンバーと肩肘張らずにコミュニケーションを取る場があるからこそ、困難に直面しても互いに助け合いながら向かっていけるのだと思います。

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