人を大切にする会社――社員の雇用を守り、人材育成に注力

「メーカーにとって大切なものは『素直さ、粘り強さ』『固有技術』『人脈』そして『資金』です」と長田社長は語る。
「第一に大切なのは目立たなくてもこつこつと取り組む、厳しい状況でも歯を食いしばって頑張る素直さと粘り強さです。また当社が創業以来30年かけて蓄積してきた固有の技術はかけがえのない財産。
それから人脈。創業当時、26歳だった私を60代、70代の年配の経営者の方々はとても可愛がってくれました。直接的な支援でなくても、激励の言葉でフォローしてくれ、辛い時にとても励みになりました。当社は大手オーディオメーカーにいた方を採用していますが、これもそのメーカーの役員と知り合いだったことがきっかけでした」。
長田社長はかつて企業が大規模なリストラ(人員整理)を行うのを目の当たりにしてきたと語る。リストラされたあるエンジニアは、高い年収を提示してきた海外のメーカーに再就職。しかし、再就職先でそれまで蓄積してきた技術やノウハウを吸い上げられた末、数ゕ月で解雇されてしまったのだという。
「以前は表情豊かだった人が、エキスを抜かれたような人相になっていました。人ではなくモノとして扱われた結果でしょう。このようなことが頻繁に行われていては、日本の技術がどんどん海外へ流出してしまいます」と、長田社長は危機感を募らせる。

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「株主や投資家の意向に左右される大手企業では、リストラもやむを得ないのかもしれません。しかし、当社のような地方の中小企業にあっては、地元の雇用を守ることも使命です。中小企業が大手企業のマネをしてリストラを行っては、日本はダメになるのではないでしょうか」。
オオアサ電子には社員の採用にもポリシーがある。入社を希望してくれた人とは「縁」があったと考え、できる限り採用することにしているという。学歴にはこだわらない。そして、どのような学歴であっても入社当初は現場勤務から始めることになっている。
「学歴は重要ではありません。入社後、どのように育成するかがきわめて重要なのです」。
オオアサ電子の製品を全国の人々、そして世界の人々に知ってもらいたいと語る長田社長。世界に知られるということは、社員のやりがいにも繋がる。生産拠点は引き続き大朝に置きつつ、グローバルな視野を持ち、「グローバルな田舎っぺ企業」をめざしたいという。
長田社長は現在62歳。残された時間も少なくなったと感じている。「これからは若い世代に引き継いでもらわなければなりません。そのためにも、若い世代の人材育成が大切。社員一人ひとりに『会社を大きくしたい、いい会社にしたい』という気持ちを持ってほしい」。
世界に通用する高い技術力を持つオオアサ電子。これからもシシンヨーと支えあいながら、広島を代表する企業になっていくことを期待したい。

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