社長を引き継がれていかがですか?

社長 2017年6月に先代である父から社長を引き継ぎました。体が大変と思ったことはないですが、精神的に大変だなと思うことはあります。社長になる前は言えていたことが、トップになってみると「我慢しよう」と思うこともあるし、「会社が傾いたらどうしよう」と心配することもあります。ただ、先代が65歳になったら引き継ぐという約束だったので、社長になる前の専務の時から、いろいろと準備はしていました。
9年前に北こぶしが設立50周年を迎えて、北こぶしのビュッフェ会場「波音」をリニューアルオープンしました。当時、私は専務でしたが、これを皮切りに「ウトロ地区で一番のホテルを目指そう!」と、いろいろと手を加えました。フロント・客室のリニューアル、料理の質向上など試行錯誤を積み重ね、お客様の評価は少しずつ上がりました。

2018年にリブランディングを実施されました。経緯とお客様の反応を教えてください。

社長 この地域を温泉地からリゾート地にしたい、そして北の自然遺産のネイチャーリゾートにしたいということで、名前からリブランディングしました。もともとは、「知床グランド」、「知床プリンス」といかにも旅館業という名前でしたが、今はあえて両方に「リゾート」という言葉を入れています。まずは自分たちが変わることで、ウトロ全体をネイチャーリゾートにしていこうという思いも込めています。
今後は、いかにネイチャーガイドさんが働きやすい環境作りができるかだと思っています。ネイチャーガイドさんの数を増やしていって、お越しいただくお客様にホテルの上質なサービスを提供していきたいですね。リブランディングの効果は少しずつ出ていて、集客は確実に良くなっています。

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スタッフのみなさんの反応はいかがですか?

社長 お客様からの評価が上がったことがスタッフのモチベーションアップにもつながったと思います。KIKIがグループに入った当初は、やりにくさを感じることもありました。親戚が経営していたホテルではあったけれど、違う会社でもあるのでギクシャクもしました。今では職員の融和も図られてきていて、いい傾向だと思います。スタッフから、働きやすくなったと言われたこともありました。旅館業の平均休暇日数は105日ですが、当グループは115日と休暇を多めにしています。給与の水準も引き上げました。
会社を強くするためには、社員が働きやすいことは当然のことだと思っていますし、今後もその部分は大切にしていきたいです。お客様の評価、スタッフの声を聴いて、経営陣としても少しずつ手ごたえを感じています。「この10年間は間違っていなかったな」と。

土地柄、人材確保は難しいのでしょうか?

社長 繁忙期をどれだけ少ない人数で回せるかが課題ですね。やはり人材確保が難しい土地ですし、昨今の人手不足の問題もありますから。今年は、新卒採用が1名でしたが、来年は7名に内定を出しています。佐々木室長を中心にうまくやってくれました。
佐々木晃也室長(以下、室長) 自然が好きな人にとっては魅力的な土地でもあります。最近は、地元の人より札幌近郊から就職してくれる人が多いです。寮があって食事があって、温泉に入れることは一つの魅力です。衣食住の心配なく働ける環境であることは、学生さんへ強くアピールできましたし、休日が他社より多いことも説明しています。そういった部分に魅力を感じてくれた学生さんとうまくマッチできたのかなと振り返っています。
社長 留学したいという若いスタッフがいましたが、当グループなら短期留学に対応できます。「KIKI」が冬に長期休館となりますので、まとまった休みが取れます。今も一人留学中ですが、本人のためになりますし、少しでも語学を習得してくれれば、会社にとってもプラスです。休館中のKIKIから、北こぶしにスタッフを送ることで、北こぶしの社員が休暇取得できますし、グループのスケールメリットを活かせていますね。

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ホテルの中に海外のスタッフの方がいらっしゃいますね。

室長 ベトナムと台湾からスタッフを受け入れています。社員とインターンシップの学生とを合わせて、十数名が働いています。インターン生は、道内の旅館やホテルと協力しながら受入れを行っています。語学の研修や、本国の料理を広めたいということで来てもらっていて、研修に励んでいます。インバウンドが増加するなか、外国人材の登用も重要な課題です。