佐賀県の若い料理人を育成

「シャンリーの名前をもっと多くの人に知ってもらいたい」という立岡氏。自ら芸能プロダクションに所属し、テレビ出演や各種講演を積極的に引き受けている。東京での仕事も少なくない。
芸能プロダクションからは料理に関する依頼もある。現在手掛けているのはまったく新しいかたちの"麻婆豆腐の素"の商品開発である。
従来の麻婆豆腐の素は、フライパンにタレと切った豆腐を入れ煮立たせ、仕上げにデンプンでとろみをつけ完成させるが、立岡氏が開発中の商品は、デンプンの代わりに寒天を使うというもの。寒天でとろみづけを行うとダマになりにくいため電子レンジでも調理ができ、家庭で本格的な麻婆豆腐を味わうことができる。早ければ平成29年中に商品化できる見込みであり、立岡氏は今後の商品展開について「うどんのダシのように、関東風、関西風と地域ごとに味を変えて販売したい」と語る。
そして、立岡氏が長年にわたり力を入れてきたのが、次代を担う若い料理人たちの育成である。多忙な日々を送る立岡氏だが、佐賀県立牛津高等学校や佐賀女子短期大学の外部講師を長年勤めてきた。
「料理を好きになってもらい、エンジョイすること」に重きをおいた立岡氏の講義は、学生からも人気。「佐賀からたくさんの料理人に羽ばたいていってほしいです」と、立岡氏は未来の料理人たちの躍進に期待を抱く。

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佐賀東信用組合との出合い

立岡氏が佐賀東信用組合と出合ったのは平成25年。シャンリー創業に当たり、友人から同組合の芹田泉理事長を紹介されたことがきっかけである。
当時のマリトピアは赤字体質の改善のためシャンリー(レストラン事業)を手放すこととなった。そうした背景からシャンリーの業況に不安を感じた金融機関は、取引に応じようとしなくなる。そのようななか、芹田理事長はシャンリーの将来性を高く評価、金融機関として唯一、取引に応じたのだという。
「料理のことしか分からず、経営に関しては素人同然だった自分を創業時から助けてくださったのが佐賀東信用組合でした。自社の損益計算書や資金繰り表の見方、作成方法を教えていただきましたし、野菜など調理の際にカットする食材については、市場には出回らないようなサイズの小さいものや形の崩れているものを安価で仕入れ、コスト削減を常に意識するなど、経営者として身に付けておくべき事項、考え方を養うことができました」と、立岡氏は当時を振り返る。創業から4年、現在のシャンリーは安定した業況が続いており、この間に培われた両者の信頼関係は強固だ。シャンリーでは社員の給与振込口座も佐賀東信用組合を指定。福岡県から通勤している社員もいるが、コンビニATM(セブン銀行)でいつでもどこでもお金を引き出せるので利便性は高く、社員の反応も上々だという。
「今後、会社の体制をより強固なものにするべく、資産運用等の相談を佐賀東信用組合にしていきたいと考えています」と、立岡氏は信用組合の継続的なサポートに期待を寄せる。

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感性を持った人間にしかできない料理を

近年、注目を集めるAI(人工知能)やビッグデータ。立岡氏は近い将来、料理界にもAIロボットが進出し、人の手をほとんど使わずに美味しい料理が作れるようになる時代がくると考えている。
「そういった機械(ロボット)に負けないように今から多くのことを勉強しなくてはなりません」と立岡氏。
「これから料理人が生き残っていくうえでは、長年の経験による勘や自分の舌を過信するのではなく、食材一つひとつに含まれる成分をデータ化し、美味しさを分析することが大切になってくると考えています」と、食材の成分分析、研究にも余念がない。
「ロボットは、どれだけ味の分析ができて美味しい料理が作れても、感性がないため、お客さまに料理を提供する順番やタイミングが分かりません。気候の変化やお客さまの体調などに臨機応変に対応しながら料理を提供できるのは、感性を持った人間だけ。料理人の感性を磨くことがなにより重要となります」。
また、立岡氏は「社員を幸せにしたいという思いが一番です」と語る。そのためには「ただ給料のために料理を作るのではなく、自分で作った料理でお客さまを喜ばせることを第一に考える料理人を育てる」ように社員を指導しているのだという。
今後の展望については、新規出店等は考えておらず、「必要に応じて社員をさまざまなホテルやレストランに派遣する体制をしっかり確立していきたい」という。また、ボランティア活動として、両親が共働きをしている子ども向けの食堂の開設や、全国の料理人が働きやすい環境づくりの整備など、シャンリーの経営以外にもさまざまな夢を広げている。
立岡氏は語る。「レストランに来たお客さまにとって最高のご馳走は、空間、雰囲気、流れる時間だと思います。お客さまに、『このレストランに来てよかった』と思ってもらえるように、気配りが行き届いたレストラン経営を目指したいです」。
金融業界においても、フィンテックの台頭に伴い窓口やテラー業務のAI化による業務の簡素化、合理化が期待されている。信用組合業界では、こうした時代の流れのなかで、業界本来の強みであるお客さまとのフェイス・トゥ・フェイスの繋がりをこれまで以上に重要視している。お客さまを第一に考えるという共通認識を持つ立岡氏と佐賀東信用組合との出合いは、必然であったのかもしれない。立岡氏の今後ますますの活躍が期待されてやまない。