SHINKUMI PEOPLE: (写真:立岡池敏社長)
インタビュー・構成 全信組連福岡支店

佐賀市内の結婚式場マリトピア内にあるレストラン「シャンリー」は、県内では有名な中国料理店である。オーナーシェフである立岡池敏氏は、日本の四川料理の父・陳建民氏のもとで修業を積み、ホテルの料理長時代には皇族や歴代総理大臣にも腕を振るった中国料理の巨匠。しかし、経営者としての立岡氏とともに歩んできたのは、佐賀県の小さな信用組合であった。株式会社シャンリーの代表取締役社長・立岡氏に、創業の経緯や料理に込めた想いについてお話をお伺いした。

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佐賀の名店「シャンリー」

料理人・立岡池敏氏をご存じだろうか。九州ではメディアにもたびたび登場する有名シェフである。その立岡氏が佐賀市内の結婚式場「マリトピア」内で経営するのが「チャイニーズレストラン シャンリー(Xiang Li)」。立岡氏の手による絶品料理は、全国の美食家たちを佐賀に呼び寄せている。
立岡氏は福岡でちゃんぽん店を営む両親のもとで育った。専門学校を卒業後、昭和49年に横浜中華街の四川料理老舗レストラン「重慶飯店」で料理人としてのキャリアをスタート。当時、重慶飯店の料理顧問を勤めていたのは「日本の四川料理の父」と呼ばれる陳建民氏(故人)であった。立岡氏は陳建民氏のもとで修行を積むこととなる。
この時、兄弟弟子としてともに修業時代を過ごしたのが、陳建民氏の実の息子にあたる陳建一氏。かつてフジテレビ系列で放送された人気番組『料理の鉄人』で名を馳せた中華の鉄人である。年齢が一つ違いで出会ってすぐに意気投合したという二人は、現在でも固い友情で結ばれた仲だ。
立岡氏は昭和60年、福岡県・直方市の中国料理店「東風」の料理長に抜擢され、昭和63年にはホテルニューオータニ佐賀内の中国料理レストラン「大観苑」の料理長として引き抜かれる。当時の佐賀県では、担担麺やエビチリなど今では一般的な中国料理があまり浸透しておらず、立岡氏の料理は大人気。レストランの売上は急上昇したという。平成10年にはホテルニューオータニ東京内に「レストラン・タテオカチャイナ」をオープン、料理長に就任した。
「ホテルニューオータニ時代に皇族や歴代総理大臣など数々の著名人に料理をお出ししたことは、私の誇りです」と立岡氏は語る。
東京での料理人としてのキャリアは順風満帆そのものであったが、「佐賀に帰りたい」という思いは次第に強くなる。そんな時、大観苑の常連客であったマリトピア社長(当時)からの誘いがあり、平成12年、マリトピア内にチャイニーズレストラン「シャンリー」をオープンする。平成25年にはマリトピアの事業分割によりレストラン事業は独立、立岡氏は「株式会社シャンリー」を設立し、代表取締役社長に就任した。

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シャンリーのこだわりの3か条

「食材にこだわりを持たなければ、お客さまに美味しい料理を提供できません。常に安全で美味しいものを提供できるようにしています」と立岡氏は語る。その基本は油・水・米の3つの要素だ。 レストランで使用する米は、佐賀県産の厳選された玄米を仕入れ、調理場で精米を行う。「調理場での精米は手間がかかりますが、その分、美味しいお米を提供できるし、精米の際に出る米ぬかを使用して作ったぬか漬けもお客さまから好評です」。油は体内の脂肪を酸化から守り、細胞の健康維持を助けるオレイン酸をたっぷり含んだキャノーラ油を使用、水は世界64ゕ国で愛用される浄化システム「シーガルフォー」を使用する。
食材へのこだわりはそれだけではない。牛肉は、佐賀セントラル牧場で飼育された生体熟成牛を一頭買いしている。生体熟成牛とは、通常18ゕ月程度で屠畜するものを、餌のバランスや穀物の割合を変化させながら、28ゕ月程度まで肥育させた牛のこと。手間をかけた分、肉の旨味が増すという。また、麺は、ANAインターコンチネンタルホテル東京やホテルオークラ東京など有名ホテルでも使用される㈱橋爪製麺の生麺を使用。食材へのこだわりは細部にまで及んでいる。シャンリーの看板メニューは担担麺や麻婆豆腐、ふかひれの姿煮など立岡氏が専門とする中国料理だが、期間限定でタイカレーをメニューに入れるなど、品揃えは中国料理に限らず幅広い。
「シャンリーで提供するメニューは中国料理が中心ですが、結婚式場内のレストランという性質上、結婚式の宴席で振る舞われる和・洋・中の様々な料理を当社がプロデュースしていることから、シャンリーのメニューにも応用され幅広いメニューを提供しています」。
地元の食材を使ったメニューも多い。佐賀県の野菜は、温暖な気候や粘土質で水持ちがよい土壌などを活かして育てられ、ミネラル豊富であることが特徴で、シャンリーでも多くの料理に使用されている。例えば「白石春巻」。佐賀県白石町の名産品である蓮根と玉葱を使用した春巻である。海の幸を取り入れたメニューも佐賀県ならでは。北は玄界灘、南は有明海と性質の異なる海岸に挟まれることから、玄海灘で採れたウニ、有明海で採れた海苔を使った「ウニ入り水餃子」はランチメニューで人気の一品である。
仕入先の選定に当たっては、必ず立岡氏自ら生産者のもとへ足を運ぶ。仕入先の多くは、タキイ研究農場付属園芸専門学校(タキイ種苗株式会社が農業後継者や園芸技能者の育成を目的として設置した専門学校)出身の農業者である。「タキイ研究農場付園芸専門学校は、全寮制で大変規律の厳しい学校として知られており、優秀な農業者が多く、信頼しています」と立岡氏は笑顔で語った。