試行錯誤を繰り返して辿り着いた独自製法

同社が生み出した「FOR製法」では、活性炭を使用した濾過等により、「非加熱」で原油から不純物を取り除く。これにより、「加熱」製法では除去されていたリン脂質を保持することができ、非常に高浸透で肌なじみの良い椿油が出来上がる。また、従来の「加熱」製法では、その過程で有害なトランス脂肪酸が発生していたが、この製法ではその発生をも防ぐことができ、安全・安心な椿油を精製することができる。
この製法を生み出すまでには、さまざまな苦労があったと安藤専務は振り返る。
「活性炭にビー玉を混ぜたり、濾過装置にホームセンターで購入したザルを使ってみたりといろいろ試行錯誤を繰り返しました。倉庫にはそれら無数の『努力の跡や残がい』が残っています。
そして、試行錯誤の日々は今も続いています。冬場は寒さから、油の温度が低下して濾過装置から油が落ちにくくなるので、装置に電気毛布を巻いたり、ハロゲンヒーターを設置したりして温め、油の落ちを良くするなどの工夫をしてします。どこにもない、当社だけの技術なので、装置を作るにもお手本がありません。何か問題が生じた時には、小さなことから創意工夫して、より良い方法を自分たちで考え続けています」

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しんくみとともに作った人気商品「アロマミスト」

同社が抱えていた悩みのひとつに「夏場の売上低下」があった。同社の主力商品であるハンドクリームなどは夏場の売上が芳しくなく、その穴を埋める商品を考案する必要があった。
夏場でも売れる商品を考えていた安藤専務は、ある日、倉庫に小さなスプレー容器の在庫が多く余っていることに気が付いた。そして、香りをつけた少量の椿油を水に混ぜ、「アロマミスト」として活用する商品を思いつく。「アロマミスト」は、大島のみやげ物として大人気となり、同社の売上は夏場も好調に推移することとなった。
商品開発では、七島信用組合の女性職員らを中心に、商品のパッケージや価格設定などについてとことん話し合った。「手に取りやすいワンコイン価格にしよう」、「香りの種類は複数あった方がいい」、「若い女性が好むパッケージデザインにしては?」など、さまざまな意見が出された。七島信用組合は完成した「アロマミスト」の販売にも協力した。
「七島しんくみさんは『この商品なら、ほかの島でも人気が出るよ』と太鼓判を押してくださり、新島や式根島へ営業をしてくれたんです。ほかにも、今まで商品を置いていなかった大島の旅館や宿泊施設へも販売をしてくれるように声を掛けてくれました」
もちろん安藤専務も、商品を店に置いてもらうための細かな工夫や気配りを惜しまない。
「島のみやげ店には、商品をケースに入れ、これに手書きのポップやテスターをつけ、そのまま販売できる形でお店まで持っていきます。また、もともと夏場の商品として考案した「アロマミスト」ですが、冬場はマスクに吹きかけて使用することで、リフレッシュ効果が得られることを思い付き、『冬場はマスクにも』というポップ広告も作り、商品を置いてくださっている店に配布しました」
こうした努力が実り、販売に当たり設定していた「2ゕ月で2000個」という高い目標をみごとに達成。安藤専務は、「私一人の力では到底達成できなかったと思います。七島しんくみさんには本当に感謝しています」と嬉しそうに語ってくれた。

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