49年間共に歩んだ〈そうごしんくみ〉

同社と相双五城信用組合(以下、〈そうごしんくみ〉)との取引は、㈲大秀商事の生産部門である㈲オオガキのころに始まった。昭和43年(1968年)からのお付き合いとのことで、今年で49年目。ほぼ半世紀になる。大柿社長は語る。 「昭和43年当時は、地元に金融機関はありませんでしたので、資金調達は非常に大変だったと父から聞いています。
金融機関がないころは、飼料メーカーから資金を融通していただくしかなく、金利という概念はなかったのですが、振り返って金利換算をしてみると非常に高金利でした。そのようななか、地元に〈そうごしんくみ〉の浪江支店が開設されたのです。しんくみとのお付き合いが始まり、そのおかげで飼料メーカーからの借入資金を返済することができたと聞いています。〈そうごしんくみ〉は当社の大変だったころに常に寄り添ってくれ、その資金面等での支援があったからこそ、今の我々があると考えております」。
地元の金融機関と地元の企業という関係により、両者の結びつきは徐々に強くなったそうである。
「私が20代のころは養鶏場の倒産が相次いでいたのですが、その時にも当時の支店長が足繁く通ってくれ、気にかけてくれたことも印象に残っています。そして震災があり、いわき市で事業を再開させていただく時も、〈そうごしんくみ〉の営業エリアとのことでしたので非常にありがたく思いました。知っている職員の方が大勢いてくださることも心強いですね」。
先代のころから付き合いの始まった㈲大秀商事と〈そうごしんくみ〉。さまざまな困難を乗り越えた企業の歴史の中には、地域金融機関として歩んできた〈そうごしんくみ〉の歴史も刻まれているのだろう。

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<こだわりのつまった商品>

親子で繋ぐ「卵」への想い

最後に大柿社長に、今後の夢について伺った。
「当初は、事業再建には10年はかかるだろうと思っていましたが、皆様の支えもあり、3年ほどでここまで来ることができました。今後は販売経路を増やして、冷凍菓子などをネット通販することも考えています。
今の私の夢は、一緒に仕事をしている息子にこの事業を継いでもらうこと。そして、これからも美味しい卵を、美味しいスイーツを、この場所から生み出していってほしいと考えています」。
先代から大柿社長へ、そしてご子息へと想いは受け継がれていく。親子三代の想いから産まれた卵と美味しいスイーツは、これからもずっと、地域の人々を笑顔にしていくに違いない。

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<卵形の建物が印象的な<たまごの郷>とご子息の陽介さん(左)と大柿社長(右)>

<コラム②~食リポ~>

取材中、「たまごの郷」で販売されているシュークリーム「いわき地養卵たっぷりシュー」をいただきました。シュークリームは大人の拳ほどの大きさがあり、中には黄色いクリームがたっぷり入っています。「たまごの郷」では社長が創意工夫し、試行錯誤を重ねながら商品を開発し、従業員の方々が日々商品を作っています。社長を含め、従業員の方々で「パティシエ」の資格をもっている方はおらず、いわゆる「普通」の方々がスイーツを作っていますが、一口食べるとちょうど良い甘さが口の中に広がり、濃厚な卵の風味を感じ、まさに卵の味が活かされた味わいになっています。
また、卵を購入し、後日たまごかけご飯でいただきました。卵の黄身はほのかにオレンジ色で、箸で摘んで持ち上げることが出来ます。卵の味を直接感じることが出来、ご飯を何杯でも食べたくなってしまいます。なお、取材中に訪れていたお客さんは、個人で30個入りのパックを購入している方もおり、人気の高さが窺えました。
卵もスイーツもとても美味しいので、いわき市に足を運ばれた際は是非一度お立ち寄りください。

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<「たっぷりシュー」を片手に微笑む梅澤相双五城信組理事長>