いつも近くで見守ってくれる「しんくみ」

サービスを開始して1年が経過しようとしていたころ、10YCは大きな壁にぶつかった。製品の注文が増え、売上が伸びたことから仕入を増やしたが、売上が徐々に落ちていったのである。仕入よりも売上のほうが少なくなり、このままでは仕入先にお金を払えなくなってしまう状況にまで追い込まれてしまった。
そんな時、相談に乗ってくれたのが、東信用組合の本所支店長だった。
支店長と初めて出会ったのは、2017年10月30日、下田氏がプレゼンターとして参加した墨田区地域クラウド交流会(注)。これまでのアパレル業界とは違う、10YCならではのビジネスについて力強く語る下田氏に、10YC製品の製造を、東信用組合の取引先の工場に委託してもらえないかと、支店長が声をかけたことがきっかけだった。支店長は、「当店の取引先の工場には、いい製品を作るノウハウがある。製造等で御社とその取引先のために少しでもお役に立ちたい。」と話した。
「取引先企業のために、できることはしてあげたいという支店長の熱い気持ちが伝わってきたんです」と、下田氏は振り返る。
「だから、墨田区で事業を始める時には、支店長のところでお世話になろうと思ったんです」。
取引を開始すると、しんくみは、困った時にはいつでも相談に乗ってくれた。融資の相談ではなくても、窓口に行くたび支店長が「調子はどう?」と声をかけてくれる。
「創業期の不安な時、そんな人が自分の近くにいてくれたことが事業を継続する励みになりました」。
地域の発展のため、人と人とを繋げるハブの役割を果たしている東信用組合。「ちかくにいるから、力になれる」ことを実践しているのだろう。
苦い経験もあったけれど、支店長がいたから、乗り越えられたところもあるし、できることは何でもやってみようと思えたと下田氏。
「仲間がいる、自分のやることを、近くで見守ってくれる人がいる。こんなに心強いことは、ほかにはないと思っています」。

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※(注)地域クラウド交流会とは、区行政、商工会議所、大学、士業、信組・信金など創業者を応援する官民支援者と創業者との出会いの場、また創業者同士の交流会の場となるイベント。創業支援策のひとつとして、全国で多数展開されている。

アパレル業界に変革を

下田氏に今後の展望を尋ねた。
「これからも3年、4年......10年と、この仕事を続けていきたいと思っています。ただ、今のアパレル業界のままでは、これから先の未来が見えなくなる。アパレル業界は変わっていかなければいけません。
だからこそ、私たちは、自分たちの製品を製造してくれる人、商品を買ってくれる人、私たちの製品に関わるすべての人が、豊かな環境になれるように努めているのです。そうした理念や考え方が広まって、それに共感してくれる人が増えればいいなと思っています」。
そして、どれだけ規模が大きくなり、事業が続いたとしても、製造してくれる工場、購入してくれた人たち、製品に関わるすべての人たちに対する感謝の気持ちだけは絶対に忘れずにいたい、と下田氏は真剣な表情で語った。
作り手を豊かに、そして買い手が、自分たちの製品と一緒に、楽しく豊かな人生を歩んでくれることを願う10YC。そんな同社は、まだ始まったばかりの若い会社である。これからの活躍に期待が膨らむ。
――Enjoy! 10YC