SHINKUMI PEOPLE: (写真:左から南友広社長、栄治会長)
インタビュー・構成 全信組連大阪支店

ものづくりの街・工業都市尼崎に昭和45年に創業した「株式会社ミナミテック」は、バイクのキーシリンダーから宇宙観測用望遠鏡の部品まで、あらゆる部品を手掛ける金属加工業の会社である。最盛期から3分の1以上が廃業・倒産したという金型産業にあって、同社はその高い技術力により安定した経営を維持している。
創業以来、家族一丸となって金属加工に取り組んできたという創業者で会長の南栄治氏、長男で社長の友広氏、栄治会長の妻で専務の績子氏、長女で常務の公子氏にお話をお伺いした。

あらゆる金属をあらゆる形に

古くから阪神工業地帯を代表する工業都市として知られる兵庫県尼崎市。新日鐵住金、三菱電機、ヤンマー、クボタなどの大企業の事業所が多く存在し、その周りには数多くの下請け企業が軒を連ねる。兵庫県信用組合の取引先「株式会社ミナミテック」(以下、「同社」)もそのコンビナートを形成する企業のひとつ。金属精密部品の加工事業、精密プレス金型の設計製作事業、試験片加工事業を手掛ける金属加工のスペシャリストである。尼崎市尾浜町の準工業地域に3つの工場を構える同社は、従業員数30名のいわゆる小規模企業だが、アルミ・真鍮・ステンレス・銅等、あらゆる材質の金属を、愛用の機械と長年培った高い技術力であらゆる形状に加工する技術力には高い評価がある。
「これはバイクのキーシリンダー(鍵差込口)、これはポテトチップの袋詰めの時に重さを図るための秤の部品、
これは国立天文台ハワイ観測所の『すばる望遠鏡』に使われている導波管(電波の伝送に使われる金属パイプ)」。
取材時に見せていただいた部品は多種多様。ほかにもプラモデルの特殊なネジ部品からデジカメ、自動車のボディ、一斗缶の蓋、駐車場の埋込みポール蓋用の金型など、我々の生活に身近なものも数多く製作している。
南友広社長(以下、「社長」)が作成に苦労した、思い入れのある製品として見せてくれたものは、自動車の鍵部分の試作加工品。もともとただの四角い鉄の塊だったものを、複数の機械を用いて、取引先の依頼どおりに凹凸状の複雑な形状にまで加工した。「自動車メーカーは新製品開発の際、まずはデザインから入ります。ですから、我々の製作する鍵部分などの付属部品は最後まで後回しになり、デザインに合わせた複雑な形を作らなくてはいけない。また、自動車のモデルチェンジは頻繁に行われるので、毎回同じ定番加工品ではなく、オーダーメイドですべてイチから作ります」。
同社の取引先には、三菱電機、新日鐵住金、神戸製鋼、住友精密等の製造業大手上場企業が含まれるほか、キリンビール、ヤンマー等との取引実績もあるという。同社に寄せられる依頼は、主に新製品開発のための試作品作り。日本を代表する大企業の新製品を陰ながら支えているのである。

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開発から製造まで自社内一貫生産の強み

同社の強みのひとつは、3つの工場に所狭しと並べられた60台を超える工作機械。マシニングセンタ13台(入力データに基づき自動で各種切削加工を行う機械)、放電加工機9台(電気エネルギーで金属を加工する機械)、研磨機4台、プレス機4台等、従業員数の2倍もの数の豊富な設備は、大企業に引けをとらない。
「小さな会社のわりに、多くの機械を揃えていることには、よく驚かれます。我々のような小さい企業は、本来、大手と新規で取引することは難しい。しかし最新機械を揃えているのを見て、取引してもらえることもあります。ある意味、機械が営業してくれているのですね」と社長は語る。また、多様な機械を取り揃えていることで短納期・スピード対応が可能になるという。一般的には、協力工場との分業作業で生産する企業が多いなか、同社では外部発注せず社内一貫生産できるため、製品の輸送日数・加工日数を削減して、効率化を図ることができる。「部品が一つでもなければ自動車は走れない」と語るのは南栄治会長(以下、「会長」)。試作品や金型など、製品開発の礎となる部品をメインに扱う同社にとって、短納期は特に重要なセールスポイントになっている。

宇宙観測にも活かされる高い技術力

同社の製品は国内のみならず海外でも活躍している。国立天文台ハワイ観測所の大型光学赤外線望遠鏡「すばる」や、チリに設置された国際共同プロジェクト「ALMA(アルマ)望遠鏡」には、同望遠鏡の製作プロジェクトチームである三菱電機との取引があった経緯から、同社の製作した部品(導波管)が採用されている。
「ブラックホールの秘密がわかるかもしれません。夢のある仕事ですね」。社長は笑顔で言う。同社は、平成14年度には阪神地域の優れたものづくり企業として「阪神モノづくりリーディングカンパニー」に選ばれたほか、27年11月には友広社長が「尼崎ものづくり達人賞」を史上最年少で受賞。28年3月にはひょうご産業活性化センターより「ひょうご成長期待企業」に認定を受けるなど、その技術力は高く評価されている。

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