SHINKUMI PEOPLE: (写真:左から、杉本七島信組本店長、安藤専務、羽深七島信組本店長代理)
インタビュー・構成 全信組連本店営業第一部

株式会社FOR-C(フォーシー)(中村克朗代表取締役社長)は、伊豆大島で「生椿油」の精製、商品化を手掛ける事業者である。同社が開発した特許技術を用い、独自の製法により生み出された「生椿油」は、べたつかず、肌にさらりとなじみ心地よい。ハンドクリームをはじめとする数々の商品は、観光客だけでなく多くのリピーターをも獲得し、大島発の特産品として好評を博している。
「より多くの方に生椿油の良さを知ってもらいたい」と語る、同社専務の安藤祐子氏にお話を伺った。

独自製法を用いた「生」椿油

島内のあちらこちらで咲き誇る「椿」の花ー。ここ伊豆大島では、古くから多くの椿が群生しており、その種から採れる「椿油」は、島の特産品として有名である。港周辺のみやげ店にも椿油やこれを使用したヘアオイル、ハンドクリームなどがずらりと並び、観光客に人気の商品となっている。
椿油は、椿の一種であるヤブツバキの種から採れる油。これを商品として売り出すためには油臭さや不純物を取り除く必要があり、原油を「加熱」することでそれらの処理を行うのがこれまでの常識であった。
しかし、この「加熱」製法では、肌の水分と油をつなぐ働きをするリン脂質が除去されてしまい、肌につけると「べたついて」しまう。この「べたつき」を改善し、肌なじみの良い椿油を作れないかと考えたのが株式会社FOR-C(フォーシー、以下「同社」)。同社は長年の研究により、「非加熱」で椿油を精製する独自製法を生み出し、「べたつかない」椿油の精製に成功したのである。
「皆さんは、『椿油はベタベタしている』というイメージを持っておられるかもしれません。でも、当社の『生椿油』を試してもらえれば、すぐに従来品との違いが分かってもらえると思います。実際、当社の商品にはリピーターも多いんですよ」と同社の安藤祐子専務は微笑みながら、自信のある表情で語る。

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「良い物」を自分の手で届けたい

同社で椿油の精製や商品販売などを一手に手掛ける安藤専務は神奈川県横浜市の出身だという。なぜ大島の会社に? という疑問に笑顔で答えてくれた。
「当初は、東京23区内に勤務していましたが、30年ほど前、東京都に勤務する夫の仕事の都合で大島に転居してきました。ある年、知り合いに誘われて、大島で毎年開かれる『椿祭り』でアルバイトをした時に、初めて椿油に出合いました。そこで、大島の椿油の品質の素晴らしさに魅力を感じ、もっといろいろな人に使ってもらいたいと思い、大島の椿油製造会社に就職しました」
2005年、その会社から、同社の中村社長らとともに独立し株式会社FOR-Cを設立。当初は、椿油の卸売りのみを行っていたが、「他社とは一味違う『非加熱で精製した生椿油の商品』を、自らの手で販売したい」との思いから、商品の企画・販売を開始。現在は、安藤専務を中心に、パート・アルバイトを含め8名で椿油の製造から販売・営業までを幅広く行っている。
椿油の精製に当たっては、品質はもちろんのこと、安定した商品供給についても心掛けている。大島の椿から採取される国産の椿油は、中国や海外のものに比べて、肌への吸収率や油の酸化しにくさの面で優れている。反面、椿の種が採れる年、採れない年に大きく差があり採取量が不安定であることから、大島の椿だけでは安定した商品供給ができない。このため、同社では中国産の原油を使用した商品の販売も行っている。
「中国産の椿油の品質は大島のものと比べると劣りますが、当社の独自製法で精製すると、より品質の良いものを作ることができます。また、企業には、お客様に商品を出した責任があります。一度販売した商品を『原材料が取れなかったから販売できない』ということはしたくありません。当社が自信をもって販売する商品だからこそ、お客様にも安心して購入していただけるような環境にしていかなくてはいけません」

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